健康生活の原理 – 1 /全3部

沖正弘先生監修の月刊誌「ヨガ」の昭和42年12月号における先生の文「健康生活の原理」を、要約しました。長いので3回に分けて投稿します。

1. ヨガとは何かを健康生活の学習と実践とを通じて解釈してみよう。「いつまでもすこやかで美しく、かつ健康で長生きしたい」という願いは人類始まって以来の本能的な願いだ。この願いが人間生活の原動力となっていると言ってもよいだろう。この願いは考えてから生じる願いではなく、考えると否とに関わらず、内から自然的に自湧するのだから、生命そのものの願いであると言ってもよいと思う。そしてこの願いに基づいてあらゆる思想や学問や方法が発達してきた。しかし多くの方法は抽象的だ。話は分かっても、その方法はわかりにくいものが多い。一方、ヨガでは一つ一つのことを具体的に行じつつ考えていく。つまり、ヨガは生命現象の事実をそのままに把握している生きている教えである。

2. 上にのべたような生活を実現したいならば、まず第一に生体の働きの事実を見なければならない。私達は時々「野蛮人は文明人よりも体が丈夫だ」というようなことを聞くが、このことは野蛮人の方が文明生活者よりも病弱にならない生活方法を行っているという事実を示しているのではないだろうか。だから、ヨガとは何かということを知るためにも、生体の働きの事実を日常生活を通じて深く観察してみよう。

 例えば、多くの人は私達の胸の中には、心臓や肺だけがあり、腹の中には胃腸、肝、腎、膵、脾臓だけがあるように思っているようだ。そして胸の中にも腹の中にも、心配や焦りや喜びや怒りのあることを知らずにいるようだ。これは人間を物的に見ているからである。確かに解剖してみても、心臓や胃の肉片は見えたとしても、心配や喜びがどこにあるかは科学的には発見できないだろう。しかしこれらが内臓の中にあるという事実は私たちが日々の生活において如実に味わっていることである。だから、ヨガでは心と体とは不可分だと見ている。

3. それでは、生命の働きとは一体何だろうか。生命現象とは生体のバランスをとる働きである。生命の原理と、宇宙の原理即ち自然の原理とは一のものである。宇宙の原理とは何か。この宇宙には親和力(陽、十、求心力、集中力)と排撃力(陰、一、遠心力、分散力)とが拮抗しあうことによって協力し合うことにより、万物の生存が保たれるのである。この宇宙の秩序が私達の生体の中でいのちの働きとして働いているのだ。健康体とはこのバランスをとる働きがスムースに働いていることだ。

4. さてそれでは、病とは何だろうか。それは生体の働きに何かのアンバランスが生じたときに、それを常態であるところのバランスの取れた自然状態に復元しようとする生命の全機的働きの現れだ。この復元運動の時、私たちは心身に異常感を感じるし、また苦しみも伴っている。 この真理を知らない人は「苦しみ即ち悪なり」と考え、この生命の働きの邪魔をする。

5. ヨガの先輩達は、生命の働きの事実の認識から、この邪魔立てするものについて気づき、体験に体験を重ねて、生命の働き即ち自然の働きにブレーキをかけない生き方、及び、万一異常が生じた場合にはその働きに協力する生き方を発見して、その理論と方法を体系立ててきたのだった。

6. 心身の働きは、使えば使うほど、鍛えれば鍛えるほど、強化し伸長するが、庇えば庇うほど弱化し、使わなければ退化してしまう。だから真の愛とは、この生命の伸長に積極的かつ意識的に協力することである。心身の働きの整っている時にはすべてのものを味方にすることができるが、乱れている時にはすべてのものを敵としてしまう。

生体は刺激の正否によって抵抗力に強弱を創る。だから、むやみに薬物を用いることは、病原菌に抵抗力をつけることになる。消化の良いものばかりを食べていると胃の働きは弱まってくる。小食していると、胃腸の吸収力が旺盛になってくる。だから、本当の意味の栄養とは、食物だけの良し悪しではなくて、これを消化、吸収、分解、排泄する内臓の働きの高いことである。この内の働きを高めることが健康保持の原則である。

7. それでは、この内の働きをみだすものは何だろうか。それは偏った不自然刺激を連続的に与えることである。すなわち不自然食、不自然息、不自然動、換言すれば、アンバランスな生活法である。

8. 生体の強さとか弱さとかは、機械的破壊力に対する強弱を言うのではなくて、生物がその生存環境に対して、どこまで適応する能力があるかということで決まる。適応できれば生き、適応できなければ死滅する、これが生命の働きの厳然たる事実である。しかもこの適応性は創られていくものである。

9. この適応性の働きをなしている内在物が神経と分泌腺である。

2/全3稿へ続く

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