感知力と理知力

沖正弘先生監修の月刊誌「ヨガ」の昭和43年5月号における先生の文「感じる力を高めましょう」で、感知力と理知力の役割の違いと、人間の進化の進化のためには両方を高めなければならないことが述べられています。ここに要約しました。

1. 私たちが高めなければならない心の働きは、感知力と理知力の二つだ。人間心の特徴は感知力に理知力がプラスされていること。感知力だけなら動物の心だ。修行や修養すなわち人間になるための各種訓練法は、この両方の働きを高めるのを目的とする。

2. 感知力とは生まれた時からすでに与えられている心の働きであり、理知力とは生まて後の勉強と体験によって身についてくる考える働きだ。理知力を高める訓練を学問という。

3. 生まれた時から与えられている感知力は二つのもので構成されている。 それは1)人間になる以前からの力、2)人間になった後にできた力、の二つである。

4.1)は宇宙につながる心。私たちは人類に進化する以前は一つの生物だった。一つの生物が、地球環境の変化と必要に応じて次々と分かれていろいろの生物が出てきた。この初めから存在した力は宇宙とそのままつながっている、純粋な自然心である。この宇宙心があるから、すべての生物は自分に適したものと適さないものを感じとれるのだ。これは教えられて知っているのではなく、初めから知っているのだ。これを「ハンニャ」という。

5. 2) は人間が動物の世界から脱却して、人類になってから後に次々と体験を重ねたことが、記憶、即ち遺伝としてつながってきたものだ。この心は、単に自分にとっての適・不適を感じるだけでなく、いろいろな複雑な感じ方をする。これは人間の祖先からのつながりの心で、霊感ともいう。この感じ方の違いが個性の別を作る。天分才能その他諸々の気質体質の違いは、根本的にはこの感じる心の違いから生じている。感じ方が違うから、動き方が違い、求め方が違い、考え方も違ってくる。

6. 1)と2)の感知力は生まれた時から持っている心の働きだ。これを潜在心という。この心が心身の働きの傾向を根本的に支配する力となる。この働きがあるから私たちは生まれてこれたのだ。生まれてから理知力が発達するまでの間も、諸々の知恵が感として働いているので、私達は教えられなくともいろいろなことを知っている。このように自覚できれば、「宇宙に感謝せよ」とか「祖先に感謝せよ」とか言われなくても、自然に感謝できるはずだ。私たちが生きていけること自体が、宇宙のおかげであり、祖先のおかげだ。

7. この感知力がよく働くためには、それを邪魔しない心の状態であること、またそういう理知力を身につけることが必要だ。感じる働きを邪魔するものを「はからいの心」という。「はからうな」というのは「考えるな」ということではなくて、正しい感じる働きに協力できるような理知力、即ち感じたこととピッタリ一致できるような考え方を身につけよということだ。

8. ちょうどよい感じ方・考え方に従って生きていれば間違いが生じない。ところが執着した心の内容が正しく変化することの邪魔をするのだ。私たちは知識を身につけることのできる動物になったために、次々と誤りも作るようになった。このようにある長所がそのまま短所を生み出す。だから、修行というのは、できるだけ長所から短所を生み出さないようにする工夫のことだ。人間は「考える」という人間心の特徴を大きく発揮活用するために、学問によって大いに考えうる内容を高め、広めると同時に、感知力をも高める工夫を、意識的に行わなければならない。

9. 真の自己教育のためには、理知力と感知力の両方を高めなければならない。

10. 感知力を高める最高の訓練法が冥想行法である。無心行法ともいう。それは感知力は無心の時ほどよく働くからである。無心行法には、禅定行法と祈り行法の二つのタイプがある。無心行法にまで、「何分座ればよいか」「いつ祈ればよいか」等、はからいをする人がいるが、無心になるために必要なことは「ただ座る」「ただ祈る」ということだ。

11. 私はよく、「先生はどうしてあんなに、心の中のことや身体のことが百発百中当たるのですか」と聞かれるが、それは考えないからだ。考えると、はからってしまい、自分勝手な判断をしやすいのだ。考えないでいると、宇宙心と祖先からの心の力がさっと働く。それに加えて、自分が生まれてから後に体験したことが頭の中で一緒になって出てくるのだ。自分でもなぜあんなことが分かるのかと考えてもわからない。

12. ただ食べてぶらぶら怠けていては感知力は働かない。最高に心身の整ったときに感知力は働く。

13. 理知力について。はからい心のうち一番困るのは、本当か嘘かわからないのに、本当だと思っていることだ。だから、人から聞いたこと、本で読んだこと、社会で言っていることを鵜呑みにせず、少しでも、自分の頭で考えることを増やしていくことが大切だ。また、自分の一回や二回だけの体験にもとらわれないことだ。その時の自分の状態でとらえ方が違ってくるからだ。

14. もう一つの理知力の役割。私たちの祖先から伝わった霊感や遺伝は全部良いものばかりではない。よくないないものを、私達は理知力を高めることによって是正しなければならない。正しい霊感を子孫に伝えることが子孫への愛であり、それが真の人類の進歩を生み出す。

15. またもう一つの理知力の役割は、感じたことを学問化することによって拡大していくことにある。私のやり方は皆そうで、ピーンと感じたことを理論づけていくのである。誰からも特別に一つ一つ教えられたわけではない。ピーンと感じたものを「どうしてだ、どうしてだ」と考えてみる、そして行じてみる。それを何回も繰り返していろいろなことを把握してきた。ただ行じ、ただ学び、そこで起こってきた感じに今度はどういう教えが含まれているのかと、知的に考えていくのだ。これが、自己拡大の方法だ。

16. ヨガは知行合一によって、感知力と理知力を高めることを目的とする。そのために必要なことは、無条件、無要求、無功徳、無打算で、ただ行じること、ただ学ぶことだ。それを、「ありがたいなあ」「愉快だなあ」と感じて行うことで、対象と調和できる。このバランスの状態がヨガの状態である。ヨガは、すべてに対して、己の全力を発揮して生きるための工夫を教えている。

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